【検証】最大777連ガチャは本当に70%の確率で判定されていたのか

※この記事はMathJaxおよび\LaTeXを使用しています。

どーも、THでございます。コロナがどうとか言ってますが相変わらず出社の毎日です。

 

ところで、皆さんはこの記事を覚えていますでしょうか。

th53439830.hatenablog.com

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この企画に際して、下記アンケートを行っておりました。

docs.google.com

今回は、このアンケートから、本当に抽選確率pが70%だったかどうか検証してみたいと思います。

なお、有効回答数は78でした。

はじめに

このアンケートには、下記の質問を設置していた。

  • 最終的なガチャ回数
  • プレイヤーレベル
  • 利用端末のOS
  • 利用端末の機種

この結果を集計し、以下の観点から検証を行う。

  1. 全体的に理論値p=0.7から外れた分布となっていないか
  2. プレイヤーレベルと回数に何らかの相関があるか
  3. iOSAndroidで大きく異なる分布になっていないか
  4. 機種レベルで特異的な結果が出るものが存在するか

1.全体的な分布を理論値の分布と比較する

まず、比較の方法を決める必要があるが、今回は取りうる結果が117から777まで10刻みの数値なので67通り、アンケートの有効回答数が78件なので、度数分布図(ヒストグラム)は小さい値が分散することになり、比較が困難になる恐れがある。

なので、本検証では累積分布による比較を採用する。

 

下図は0.1刻みのpにおける累積分布の理論値である。

f:id:TH53439830:20200603170227p:plain

ここに、78件分の結果を累積分布化し、重ねる。

f:id:TH53439830:20200603170517p:plain

序盤\dfrac{\ 1\ }{\ 3\ }の範囲は大きくずれているところもあるが、残り\dfrac{\ 2\ }{\ 3\ }の範囲では概ねp=0.7の分布に沿う結果となった。

よって、結論としては、「抽選確率が0.7であることは否定できない」となる。*1

2.プレイヤーレベルとガチャ回数の相関を調べる

次に、各データのガチャ回数とプレイヤーレベルを軸に散布図を取り、相関があるか調べる。

f:id:TH53439830:20200603173919p:plain

どうやら、この2つに相関はなさそうである。初心者ほど大きく引けることや、高レベルになるほど回数が制限されることもなく、かといっていくつかの集団が発生している様子も見られない。

よって結論としては、「プレイヤーレベルはガチャ回数に無関係と考えられる」となる。

3.OS間の結果に大きな差が存在するか調べる

スマートフォンに搭載されているOSは大きくiOSApple社)とAndroidGoogle社)の2つである。Windows Phoneなるものもあった(auより販売されていたこともある)が、あれは過去の遺物である。

ここでは、結果をiOSAndroidに分けて集計し、それぞれの累積分布を理論値と比較する。なお、回答のうち、iOSは52件、Androidは26件であった。(ぴったり2:1?!)

f:id:TH53439830:20200603180248p:plain

図を確認する限り、2つのOS間で大きな隔たりがあるとはいえなさそうである。

4.機種間の結果に大きな差が存在するか調べる

OSレベルでは大きな差は見られなかったが、それぞれの機種そのもののスペックにも差がある。ランキングイベントで上位を獲るためにわざわざ買い換える、なんてことも実際のところ発生している。*2

なので、一応機種ごとの平均も集計し、端末の処理能力が抽選に与える影響も調べる。

以下、1枚目がiPhone/iPad、2枚目がAndroid各機種の平均である。(iPad以外はおおよその発売順にソート。特定できなかった回答は「-」としている。)

f:id:TH53439830:20200603183047p:plain

f:id:TH53439830:20200603183049p:plain

まず、iOSだが、iPhone 7Plusのユーザー(1名)が777連に到達していることを除けば、ほぼ横並びであった。

次に、Androidであるが、一見ばらつきが多く、Galaxy S7 edgeやXperia5が突出して少ないように見える。

だが、15機種の平均値\muは316.33、標準偏差σは85.90であり、全ての数値が\mu\pm 2σの範囲に収まることから、明らかに突出して大きい、または小さいものはないと考えられる。

まとめ

上記4点をまとめると、

  • 抽選確率が0.7であることは否定できない
  • プレイヤーレベルはガチャ回数に無関係と考えられる
  • 2つのOS間で大きな隔たりがあるとはいえなさそう
  • 機種間で明らかに突出して大きい/小さいものはないと考えられる

である。以上から最終的な検証結果は、

「プレイヤーレベルや端末の処理能力に関係なく、全プレイヤーが70%の確率で抽選されていたと考えられる」

となる。


今回は抽選確率が平等だったか検証していきましたが、とくに問題点はありませんでした。

あまり長くなるのもアレなので、今回はこのへんで。

*1:これは統計学的な言い方で、抽選確率が0.7であると数学的に断言はしていない。

*2:実際、「黒ウィズ」のランキングイベント「魔道杯」では、ランカーが使用しているデッキを筆者の端末(TORQUE G03・Android 8.1)で同様に再現しても1分ほどの差が生まれることがある。

偏差値181億に真剣に立ち向かう話(4・終)―科学的アプローチによるゴリ押し―

※この記事はMathJaxおよび\LaTeXを使用しています。

今回は下記記事の続き、「科学的アプローチ」についてとなります。

th53439830.hatenablog.com

前回は、関数

\begin{align}
f(x)=\frac{1}{10\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{(x-50)^{2}}{200}\right)
\end{align}

を用いた定積分

\begin{align}
S(a)=\int_{a}^{\infty}f(x)dx
\end{align}

によって評価を行ったが、それでも限界はあった。

なので、別の計算しやすい図形または数式が必要となる。

別の簡単な図形を尺度として利用できるか検証する

下図のような点{\rm P}(a,f(a))におけるf(x)の接線を用いた三角形{\rm PQR}の面積をS(a)の尺度として扱えるかを考えてみる。

f:id:TH53439830:20200420183953p:plain

f(x)導関数f'(x)は、

\begin{align}
f'(x)&=\frac{1}{10\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{(x-50)^{2}}{200}\right)\cdot\left\{-\frac{(x-50)^{2}}{200}\right\}'\\
&=-\frac{x-50}{1000\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{(x-50)^{2}}{200}\right)
\end{align}

であり、点{\rm P}(a,f(a))におけるf(x)の接線は、

\begin{align}
y=(x-a)f'(a)+f(a)
\end{align}

であるから、点{\rm R}x座標x_0は、

\begin{alignat}{2}
&(x_0-a)&&f'(a)+f(a)=0\\
&\!\!\!\iff x_0\!&&=a-\frac{f(a)}{f'(a)}\\
&&&=a-\frac{1}{10\sqrt{2\pi}}\cdot-\frac{1000\sqrt{2\pi}}{a-50}\\
&&&=a+\frac{100}{a-50}
\end{alignat}

となる。よって、

\begin{align}
T(a)&=\triangle{\rm PQR}=\frac{1}{2}\cdot(x_0-a)f(a)\\
&=\frac{50}{a-50}f(a)
\end{align}

とし、S(a)との比が一定値に収束するかを以下の式を用いてWolfram Alphaにて調査する。

\begin{align}
\frac{S(a)}{T(a)}=\frac{\displaystyle\int_{a}^{\infty}f(x)dx}{\dfrac{50}{a-50}f(a)}=\frac{(a-50)\displaystyle\int_{a}^{\infty}\exp\left(-\frac{(x-50)^{2}}{200}\right)dx}{50\exp\left(-\dfrac{(x-50)^{2}}{200}\right)}
\end{align}

f:id:TH53439830:20200502192627p:plain

f:id:TH53439830:20200502192651p:plain

どうやらT(a)S(a)の比は1:2になるようである。よって、新しい評価式P(a)

\begin{align}
P(a)&=2T(a)\\
&=\frac{100}{a-50}f(a)\\
&=\frac{10}{(a-50)\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{(a-50)^{2}}{200}\right)
\end{align}

と定め、評価を再開することにする。

Level3:偏差値=111,081を再計算する

f:id:TH53439830:20200502194607p:plain

計算結果は上位6.8851×10-26769661%ということで前回と同じ。何ら問題はなさそうなので先へ進むとしよう。

Level4:偏差値=18,111,081

f:id:TH53439830:20200502195213p:plain

Why?

\exp(x)ですらオーバーフローになるのであれば、別の手段を使うしかないっ……!


科学分野では極稀に、

\begin{align}
2^{10}=1024\fallingdotseq10^3
\end{align}

という近似を用いることがある。ここでは、

\begin{alignat}{2}
e^{-65}&=5.90009\cdots\times10^{-29}&&\fallingdotseq5.9\times10^{-29}\\
5.9^{48}&=1.00206\cdots\times10^{37}&&\fallingdotseq1.0\times10^{37}
\end{alignat}

を用いて計算を簡便にする。なお誤差については今後ノークレームでお付き合い願いたい。

\begin{align}
\frac{(18111081-50)^2}{200}&=\frac{328009443882961}{200}\\
&=25231495683\times65+\frac{3961}{200}\\
25231495683&=525656160\times48+30
\end{align}

より、

\begin{align}
&\exp\left(-\frac{(18111081-50)^{2}}{200}\right)\\
&\fallingdotseq(5.9\times10^{-29})^{25231495683}\exp\left(-\frac{3961}{200}\right)\\
&=5.9^{30}\times10^{19449277920}\times10^{-731713374807}\exp\left(-\frac{3961}{200}\right)\\
&=5.9^{30}\exp\left(-\frac{3961}{200}\right)\times10^{-712264096887}
\end{align}

なので、

\begin{align}
P(18111081)&\fallingdotseq\frac{10\cdot5.9^{30}}{18111031\sqrt{2\pi}}\cdot\exp\left(-\frac{3961}{200}\right)\times10^{-712264096887}\\
&\fallingdotseq7.3676\times10^{-712264096880}
\end{align}

すなわち偏差値18,111,081はおおよそ上位7.3676×10-712264096878%となる。比較する相手が見つからないので先に進む。

Level5:偏差値=18,118,111,081

先ほどと同様に、

\begin{align}
\frac{(18118111081-50)^2}{200}&=25251226717818760\times65+\frac{2961}{200}\\
25251226717818760&=526067223287890\times48+40
\end{align}

より、

\begin{align}
&\exp\left(-\frac{(18118111081-50)^{2}}{200}\right)\\
&\fallingdotseq(5.9\times10^{-29})^{25251226717818760}\exp\left(-\frac{2961}{200}\right)\\
&=5.9^{40}\times10^{19464487261651930}\times10^{-732285574816744040}\exp\left(-\frac{2961}{200}\right)\\
&=5.9^{40}\exp\left(-\frac{2961}{200}\right)\times10^{-712821087555092110}
\end{align}

なので、

\begin{align}
P(18118111081)&\fallingdotseq\frac{10\cdot5.9^{40}}{18118111031\sqrt{2\pi}}\cdot\exp\left(-\frac{2961}{200}\right)\times10^{-712821087555092110}\\
&\fallingdotseq 5.5866\times10^{-712821087555092096}
\end{align}

すなわち偏差値18,118,111,081はおおよそ上位5.5866×10-712821087555092094%となる。

%表記における指数部は10の「マイナス71京2821兆0875億5509万2094」乗である。

仏典「華厳経」に記されている巨大数を用いて近い数値を表現するなら、

\begin{align}
P(18118111081)\fallingdotseq 5.5866\times\dfrac{\hspace{-1.3em}1\text{阿麼怛羅}}{1\text{奚麼怛羅}\times1\text{那麼怛羅}\hspace{2.6em}}
\end{align}

辺りだろう。流石に悟りを開いているだけあるわ……*1

参考:Wikipedia

命数法#仏典の数詞 - Wikipedia

まとめ

下表に、各手法での計算結果をまとめておく。

  偏差値 上位◯%
統計学的アプローチ 数学的アプローチ 科学的アプローチ
Level1 81 9.6760×10-2 9.6760×10-2
Level2 11,081 計算不可 2.3215×10-264233
Level3 111,081 6.8851×10-26769661
Level4 18,111,081 計算不可 7.3676×10-712264096878
Level5 18,118,111,081 5.5866×10-712821087555092094

中盤辺りからすでに天文学的数字の範疇を超えてしまっているが、こうして見ると、偏差値の桁数が1つ増えるごとに、確率の指数部の桁数が2つ増えていくようである。

このシリーズはこれにて終幕となりますが、MathJaxの記述方法等、ブログ執筆の点で学べることが多かったので、今後はそのあたりのまとめでも書いていこうかと思います。

では今回はこのへんで。

*1:ちなみに奚麼怛羅は「けいまたら」、那麼怛羅は「なまたら」、阿麼怛羅は「あまたら」と読むそうだ。

偏差値181億に真剣に立ち向かう話(3)―数学的アプローチによる検証―

※この記事はMathJaxおよび\LaTeXを使用しています。

今回は下記記事の続き、「数学的アプローチ」についてとなります。

th53439830.hatenablog.com

なお、これ以降では自然対数の底eに対し、そのべき乗である関数を

\begin{align}
e^t=\exp(t)
\end{align}

と表記することにします。

偏差値の正体と前回使用した計算式との関係性

平均\mu、分散\sigma^2標準偏差\sigma)の正規分布を表す確率密度関数

\begin{align}
f(x)=\frac{1}{\sqrt{2\piσ^2}}\exp\left(-\frac{(x-\mu)^{2}}{2σ^{2}}\right)
\end{align}

であり、そのグラフは下図の通りである。

f:id:TH53439830:20200409005224p:plain

ここで、グラフとx軸の間の面積について、

\begin{align}\int_{a}^{b}f(x)dx\end{align}

は確率変数xa以上b以下となる確率を表し、特に、

\begin{align}
\int_{\mu-σ}^{\mu+σ}f(x)dx\fallingdotseq0.6827,&\int_{\mu-2σ}^{\mu+2σ}f(x)dx\fallingdotseq0.9545,\\
\int_{\mu-3σ}^{\mu+3σ}f(x)dx\fallingdotseq0.9973,&\int_{-\infty}^{\infty}f(x)dx=1
\end{align}

である。今回取り扱う「偏差値」は平均が50、標準偏差が10なので、

\begin{align}
f(x)=\frac{1}{10\sqrt{2\pi}}\exp\left(-\frac{(x-50)^{2}}{200}\right)
\end{align}

となる。

したがって、前回取り上げた「1-CDF[NormalDistribution[50,10],x]」との関係性は、

\begin{align}
1-{\rm CDF[NormalDistribution}[50,10],x]=\int_{x}^{\infty}f(t)dt
\end{align}

と表される。

Level1:偏差値=81を再計算する

f:id:TH53439830:20200409014955p:plain

前回との差もなく大丈夫そうである。いよいよここからは未知の領域へ……

Level2:偏差値=11,081

f:id:TH53439830:20200409015404p:plain

すなわち偏差値11,081は上位2.3215×10-264233%となる。かの有名な大企業Google社の社名の由来となった巨大数グーゴルは10100である。その2642乗分の1よりも小さいのである。とはいえ、統計学用関数から数式に切り替えたおかげで、前回超えられなかった壁を一つ越えたことに感謝して、次に進もう。

Level3:偏差値=111,081

f:id:TH53439830:20200409022945p:plain

すなわち偏差値111,081は上位6.8851×10-26769661%。もはや尺度も何もない状況である。

Level4:偏差値=18,111,081

f:id:TH53439830:20200409232850p:plain

メッセージ:「Wolfram Alphaはクエリを理解できません」

Wolfram Alpha、2度目の敗北である。

誠に残念である(何が)。では偏差値いくつまでなら計算できるのか。

f:id:TH53439830:20200412234552p:plain


f:id:TH53439830:20200412222258p:plain

どうやら100万ですら計算できない様子。これでは先へは進めないのも当然である。

現状のまとめ

下表に、現時点での計算結果をまとめておく。2つ進んだが2つ残ってしまった。

  偏差値 上位◯%
統計学的アプローチ 数学的アプローチ
Level1 81 9.6760×10-2 9.6760×10-2
Level2 11,081 計算不可 2.3215×10-264233
Level3 111,081 6.8851×10-26769661
Level4 18,111,081 計算不可
Level5 18,118,111,081

今回はここまで。次回は「科学的アプローチ」で再々検証を行う予定である。

最大777連ガチャの期待値に関する補足

どーも、THでございます。

今記事では、下記記事の補足説明や公開後に判明した事項について書いていこうと思います。

th53439830.hatenablog.com

回数ごとの確率表

3/7(土)に実際に最大777連ガチャが開始され、継続チャレンジに成功する確率はp=0.7と確定しましたので、ガチャ回数ごとの確率表を以下に書いておきます。

ガチャ回数 確率[%] ガチャ回数 確率[%]
117 0.00059 457 1.80204
127 0.00413 467 1.58580
137 0.01591 477 1.38757
147 0.04456 487 1.20756
157 0.10137 497 1.04550
167 0.19869 507 0.90073
177 0.34770 517 0.77238
187 0.55632 527 0.65935
197 0.82753 537 0.56045
207 1.15854 547 0.47442
217 1.54085 557 0.40003
227 1.96109 567 0.33602
237 2.40233 577 0.28124
247 2.84584 587 0.23456
257 3.27271 597 0.19498
267 3.66544 607 0.16155
277 4.00908 617 0.13344
287 4.29207 627 0.10990
297 4.50667 637 0.09024
307 4.64899 647 0.07390
317 4.71872 657 0.06035
327 4.71872 667 0.04916
337 4.64538 677 0.03994
347 4.53296 687 0.03237
357 4.36297 697 0.02618
367 4.15355 707 0.02112
377 3.91392 717 0.01700
387 3.65299 727 0.01366
397 3.37902 737 0.01095
407 3.09938 747 0.00876
417 2.82043 757 0.00699
427 2.54749 767 0.00557
437 2.28478 777 0.02105
447 2.03553

場合分けの妥当性について

元記事では、

  • 成功回数65回以下で失敗回数が10回に達して終了する場合
  • 失敗回数9回以下で成功回数が66回に達して終了する場合

の2つに場合分けをして計算を行った。この場合分けが正しいかどうかを下記期待値の式

\begin{align}
E=\sum_{k=0}^{65} {\left\{k\cdot_{k+9} \textrm{C}_{k}p^k(1-p)^{10} \right\}}+66\sum_{k=0}^{9}{\left\{_{k+65} \textrm{C}_{k}(1-p)^{k}p^{66} \right\}}
\end{align}

から確率変数にあたる部分を除いた以下の式

\begin{align}
\sum_{k=0}^{65} {\left\{_{k+9} \textrm{C}_{k}p^k(1-p)^{10} \right\}}+\sum_{k=0}^{9}{\left\{_{k+65} \textrm{C}_{k}(1-p)^{k}p^{66} \right\}}
\end{align}

の値を調べることで確認する。値が1であれば漏れや重複がないことの簡易的なエビデンスとなる。

例のごとくWolfram Alphaで計算すると……

f:id:TH53439830:20200308184913p:plain

値が1なのでこの方針に問題はなさそうである。

実は当初方針を間違えていた

当初の予定では、1日に初回含めて10連ガチャを引く回数の期待値をEとおいて、

\begin{align}
E&=1\cdot (1-p)+2\cdot p(1-p)+3\cdot p^2(1-p)+\cdots\\
&=\sum_{k=1}^{\infty}\left\{kp^{k -1}(1-p)\right\}
\end{align}

を計算し、期待値の線形性から10日×10連分で100倍して最後に保証されている10連1回と単発の7連を足す方針だった。

計算を進めると、

\begin{align}
S_n=1+2p+3p^2+\cdots+(n-1)p^{n-2}+np^{n-1}
\end{align}

とした時、

\begin{align}
pS_n=p+2p^2+3p^3+\cdots+(n-1)p^{n-1}+np^n
\end{align}

から、

\begin{align}
(1-p)S_n&=1+p+p^2+\cdots+p^{n-1}-np^n\\
&=\sum_{k=1}^{n}p^{k -1}-np^n\\
&=\frac{1-p^n}{1-p}-np^n
\end{align}

よって、

\begin{align}
E&=\lim_{n\to\infty}(1-p)S_n\\
&=\lim_{n\to\infty}\left(\frac{1-p^n}{1-p}-np^n \right)=\frac{1}{1-p}
\end{align}

以上から、期待値は

\begin{align}
100E+17=\frac{100}{1-p}+17
\end{align}

となる。以下に、0.1刻みのpの値ごとの結果を示す。なお、実際のガチャ回数は100E+17なので注意。

p 100E+17
0.1 128.1111
0.2 142.0000
0.3 159.8571
0.4 183.6667
0.5 217.0000
0.6 267.0000
0.7 350.3333
0.8 517.0000
0.9 1017.000

で、これの何が問題なのかというと、「p=0.9のときに期待値が最大回数の777を超えてしまっていること」である。

ついでに言うと、p=0.7以上で元記事と結果が異なっている部分があり、さらには、ここには書いていない小数第5位以下においても相違が発生しているのである。

何故こうなってしまったのか。それは最初の段階で

\begin{align}
E&=1\cdot (1-p)+2\cdot p(1-p)+3\cdot p^2(1-p)+\cdots\\
&=\sum_{k=1}^{\infty}\left\{kp^{k -1}(1-p) \right\}
\end{align}

と、無限級数を用いて計算したことがそもそもの原因である。というのも、このガチャ、無限に試行できるわけではなく、継続チャレンジの成功回数と失敗回数ともに上限があるのだ。その時点で、無限級数を使うべきではなかったのである。

私自身はp=0.9を代入する前に偶然気づいたが、Twitterを見ていると期待値333.3連という記述をちらほら見かける。どうか気づいていただきたい。無理か。

 

以上、補足説明でした。また何かあればここに追記しようと思います。

3/20追記

期待値の展開式について

元記事において、pの66次以下の項をまとめていたが、それはaを定数として

\begin{align}
\sum_{k=a}^{a+10}{_{k+9}\textrm{C}_k\cdot k\cdot _{10}\negthinspace\textrm{C}_{k-a}\cdot (-1)^{k-a}}=10
\end{align}

が成立するかららしい。逐次計算する以外に証明方法が思いつかないが……

アンケート実施中

現在、Googleフォームにて今回のガチャに関するアンケートを実施しています。よろしければご協力お願いいたします。

※4/16 20:20をもって回答の受付を終了いたしました。

docs.google.com

3/20追記分は以上となります。

最大777連ガチャは実際のところ何連引くことができるのか

どーも、THでございます。

今回は、スマートフォン向けゲームアプリ「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」(通称:黒ウィズ)にて本日3/7(土)から開始される「最大777連無料ガチャ」について、私なりに期待値を計算して見ようと思います。

※一個人の考察となるため、信じるかどうかは自己責任でお願いします。

 

このガチャの現時点で判明している仕様は以下の通り。

  • 期間は10日間
  • 各日の初回10連ガチャ後、1回目の「継続チャレンジ」が発生
  • 「継続チャレンジ」に成功すれば10連ガチャをもう一度引くことが可能
  • 「継続チャレンジ」は10連ガチャを引くたびに発生
  • 「継続チャレンジ」に失敗した時点でその日のガチャは終了
  • 最大777連まで引くことが可能
  • 端数の7連分は確定で引ける単発
  • 9日目まで初回の「継続チャレンジ」に全て失敗している場合は、最終日の初回の「継続チャレンジ」は必ず成功する。

よって最大777連の内、

  • 単発となる7連分
  • 各日初回10連×10日分=100連分
  • 「継続チャレンジ」の成功が保証されている1回分=10連分

は確率計算から除外される。

777連から上記除外分の117連を除くと660連となるため、今記事では、

「継続チャレンジ」の10回目の失敗までに何回成功できるか』に着目して計算する。

66回目の成功でそれまでの失敗回数にかかわらず強制終了となるため、

  • 成功回数65回以下で失敗回数が10回に達して終了する場合
  • 失敗回数9回以下で成功回数が66回に達して終了する場合

の2つで場合分けを行う。

なお、以降では「継続チャレンジ」の成功確率は試行回数にかかわらず、

一定値p (0\lt p\lt 1)であるとする。

成功回数65回以下で失敗回数が10回に達して終了する場合

※最後の判定は必ず「失敗」となる。

0回成功:\displaystyle _{9}\textrm{C}_{0}(1-p)^{9}\cdot(1-p)

1回成功:\displaystyle _{10}\textrm{C}_{1}p(1-p)^{9}\cdot(1-p)

2回成功:\displaystyle _{11}\textrm{C}_{2}p^{2}(1-p)^{9}\cdot(1-p)

n回成功:\displaystyle _{n+9}\textrm{C}_{n}p^n(1-p)^{9}\cdot(1-p)

65回成功:\displaystyle _{74}\textrm{C}_{65}p^{65}(1-p)^{9}\cdot(1-p)

失敗回数9回以下で成功回数が66回に達して終了する場合

※最後の判定は必ず「成功」となる。

0回失敗:\displaystyle _{65}\textrm{C}_{0}p^{65}\cdot p

1回失敗:\displaystyle _{66}\textrm{C}_{1}(1-p)p^{65}\cdot p

2回失敗:\displaystyle _{67}\textrm{C}_{2}(1-p)^{2}p^{65}\cdot p

n回失敗:\displaystyle _{n+65}\textrm{C}_{n}(1-p)^{n}p^{65}\cdot p

9回失敗:\displaystyle _{74}\textrm{C}_{9}(1-p)^{9}p^{65}\cdot p

したがって、求める期待値は、

\begin{align}
E=&\sum_{k=0}^{65}{\left\{k\cdot_{k+9}\textrm{C}_{k}p^k(1-p)^{10}\right\}}+66\sum_{k=0}^{9}{\left\{_{k+65}\textrm{C}_{k}(1-p)^{k}p^{66}\right\}}
\end{align}

となる。この式を人力で展開するわけにはいかないのでWolfram Alphaに入れてみる。

f:id:TH53439830:20200306225335p:plain

下にスクロールして……

f:id:TH53439830:20200306225528p:plain

どうやら66次以下の項はまとめられそう*1である。よって、

\begin{align}
E=&10p\cdot\frac{1-p^{66}}{1-p}-142466675890p^{67}\\
&+1102021640060p^{68}-3731643123340p^{69}\\
&+7224663673700p^{70}-8746853981140p^{71}\\
&+6781010405510p^{72}-3287285224190p^{73}\\
&+911077432210p^{74}-110524147514p^{75}
\end{align}

となる。

以下に、0.1刻みのpの値ごとのおおよその期待ガチャ数を示す。なお、実際のガチャ回数は10E+117なので注意。

p 10E+117
0.1 128.1111
0.2 142.0000
0.3 159.8571
0.4 183.6667
0.5 217.0000
0.6 267.0000
0.7 350.3256
0.8 512.9835
0.9 749.2541

結論:実際に蓋を開けるまではわからないが、200連ぐらいは期待しても良さそうである。

※あくまで一個人の考察となるため、信じるかどうかは自己責任でお願いします。

 

※3/9(月):追記書きました。

th53439830.hatenablog.com

*1:単純な等比数列の和となっている。何故かはわからないが……

偏差値181億に真剣に立ち向かう話(2)―統計学的アプローチの再検証―

どーも、THでございます。

今回はこちらの続きとなります。いよいよ計算分野の話になります。

th53439830.hatenablog.com

計算方法の確認

まずは元記事で検証に使われていた下記計算方法について見ていくことにする。

確率=1-CDF[NormalDistribution[50,10],x]

ここで、

  • CDF[dist,x]は分布distにおいて、観測値がx以下の値を取る確率を返す。
  • NormalDistribution[\mu,\sigma]は平均\mu標準偏差\sigma正規分布を表す。
  • 「偏差値」は平均が50、標準偏差が10である正規分布に規格化したものである。
  • 全事象の確率の総和は1である。

よって、上記の式の意味するところは、

「平均50、標準偏差10の正規分布において、偏差値がx以上である」確率

となる。正規分布標準偏差等々の細かい説明は各々調べていただくとして、この評価式がどれくらいの偏差値に有効か試してみる。

Level1:偏差値=81

f:id:TH53439830:20200302234054p:plain

難なく結果が表示された。すなわち、偏差値81は上位9.6760×10-2 %ということになる。

Level2:偏差値=11,081

f:id:TH53439830:20200302234624p:plain

小数点以下の表示がなくなってしまった。Result欄の「More digits」を押してさらに計算させてみよう。

f:id:TH53439830:20200302235019p:plain

指数が100に到達し……↓

f:id:TH53439830:20200302235132p:plain

これ以降は指数は倍々になって……↓

f:id:TH53439830:20200302235344p:plain

f:id:TH53439830:20200302235529p:plain

f:id:TH53439830:20200302235624p:plain

f:id:TH53439830:20200302235738p:plain

……ついに「More digits」が出なくなってしまった。よってこの評価式はLevel2をクリアできなかったことになる。すなわち女神の豊満なボディにWolfram Alphaが屈したことになる。

では、一体いくらまでなら評価できるのか。

偏差値=10,000

f:id:TH53439830:20200303000444p:plain

結果:計算不可

偏差値=5,000

f:id:TH53439830:20200303000717p:plain

結果:計算不可

偏差値=2,000

f:id:TH53439830:20200303000941p:plain

結果:計算不可

偏差値=1,000

f:id:TH53439830:20200303001353p:plain

結果:計算可能

指数に余裕があるので、少し増やしてみる。

偏差値=1,250

f:id:TH53439830:20200303001736p:plain

結果:計算可能

以上から、統計学関数では偏差値1,250ぐらいまでしか計算できないことがわかった。Level2に歯が立たなかったのも当然である(違う)。

現状のまとめ

下表に、現時点での計算結果をまとめておく。残念ながら1つしか埋まっていない。

  偏差値 上位◯%
 統計学的アプローチ 
 Level1  81   9.6760×10-2 
 Level2  11,081   計算不可 
 Level3  111,081   ― 
 Level4  18,111,081   ― 
 Level5   18,118,111,081   ― 

今回はここまでにしておこうと思う。次回は「数学的アプローチ」にて検証を再開する予定である。

偏差値181億に真剣に立ち向かう話(1)―序文―

どーも、THでございます。

突然ですが、皆さんは2020年3月にめでたくリリースから7周年を迎える、とあるスマートフォン向けゲームアプリをご存知だろうか。

株式会社コロプラから配信されている「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」(通称:黒ウィズ)である。

colopl.co.jp

私自身も2014年6月に始めて以来プレイし続けているが、このゲーム、「クイズRPG」というジャンルが災いしてかどうかはわからないが、あまり一般受けは良くなかったりする。

ゲーム自体に関しては各自調べていただくとして、ある1人のユーザーによってゲーム中のキャラクター(以降「精霊」と呼ぶ)への評価記事が昨年11月に発表されたのがことの発端である。

ちなみに言っておきますが、健全な方は記事の内容を読む必要は特にございません。

blog.livedoor.jp

この記事では、精霊に対する評価を独自の基準に則った「偏差値」*1を用いて行っている。

その評価結果が想定以上にぶっ飛んでいるのである。以下に評価内容を抜粋する。

 

精霊 偏差値
プリフィカ
ミーテ
81 
サフィナ 11,081 
リャーテ 111,081 
ダリア 18,111,081 
リタ 18,118,111,081 

 

……まさかの最大偏差値181億1811万1081である。

そして、この衝撃的な記事が掲載された翌日、別のユーザーによって考察記事が投稿された。

ark-n.hatenablog.com

この記事では、その偏差値が、

  • 上位何%にあたるのか
  • 何人に1人の存在なのか

を計算知識エンジン「Wolfram Alpha」によって検証している。以下にその結果を抜粋する(何人に1人の存在なのかについては省略した)。

 

偏差値 上位◯%
81  0.0967603
11,081  0.×10-98
111,081  0.×10-99
18,111,081  計算不可
18,118,111,081  計算不可

 

なんということでしょう。あのWolfram Alphaですら後半の計算ができていないではありませんか。しかも2番めからすでに仮数*2が正常に表示されていない。こ れ は ひ ど い。

しかし、Wolfram Alphaが高々10のマイナス100乗程度で音を上げるとは到底思えないので(ユーザーの経験と勘による)、この強大すぎる偏差値について再検証してみたいと思う。

なお、上記の考察は統計学関数を用いた「統計学的アプローチ」によって与えられているが、今後の検証ではこれに加えて「数学的アプローチ」と「科学的アプローチ」も交えていくことにする。

とはいえ、既に文字数が210を超えてしまっているようなので、今回はこの辺で引き上げることにする。なお、次回の投稿予定は未定である。

高校の計算分野なら何でもござれのWolfram Alphaはこちら↓

www.wolframalpha.com

 

*1:記事内での正式な名称はタイトルにもあるように「母乳偏差値」であるが、当ブログにおいては重要ではないため省略する。

*2:◯×10の◯のこと。10の部分は「指数部」と呼ばれる。